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わノ櫓~れノ渡櫓

少し横道に逸れましたが、いよいよ西の丸のメインイベントである百間廊下へと足を踏み入れましょう。ここは天守群への登閣と同様、履物は脱いで各自備え付けのビニール袋に入れて持ち運びください。入口には戻ってきません。また入口と出口の階段のほかに、途中2か所短いですが屋内に急な上り階段がありますので、くれぐれもお足元にはご注意ください。スリッパが足に合わない小さなお子様は、階段のところではスリッパをお脱ぎになったほうが安全かと思います。

百閒廊下入口ここ百間廊下は、名前は百間ですが実際の長さは121間、約240mあります。これから見学するわノ櫓脇から入って半分ぐらいまでのるノ櫓までは、往時は主に倉庫として使われていました。その先、化粧櫓までの北半分は長局でした。長局とは、城主やお姫様にお使えする奥女中たちが起居する集合住宅のようなものです。本多忠政が嫡男忠刻と千姫のために建てた御殿、中書丸がこの西の丸の中心に建てられたわけですから、この時代には確実にこの百間廊下に多くの奥女中が住んでいたものと思われます。このような長局がここまで完存している例は全国でも姫路城西の丸だけであり、たいへん貴重な文化財です。しかし忠刻が早逝し、千姫が姫路を去った寛永3年(1626年)以降は中書丸もその役割を終えたようですから、奥女中たちも御居城と呼ばれる三の丸の御殿のほうに引っ越したのではないかと思います。結局、本来の長局の役割を果たしていたのは西の丸造営からわずか20年ほどの間だけだったようです。

さて、わノ櫓脇の入口から中に入ってみましょう。いきなり短い上り階段があり、上りきるとそこから長い廊下が始まります。
れノ渡櫓石落しまずは廊下を進む方向に見て左手の壁際をご覧ください。これから百間廊下を進むとき、左手はずっと城外側、右手は先ほどまでいた西の丸、城内側です。ここに蓋付きの石落しがあります。石落しは先ほど西の丸の土塀のところでも見ましたが、石垣を登ってくる敵などに攻撃を加える装置です。石落しという名前から、多くの書物やお城の案内板などにも「ここから石を落して敵を撃退する」などと書かれていますが、これは間違いです。石落しは多くは石垣の隅部にだけ、あるいはここのように建物の壁や塀に取り付けられているとしてもその間隔はごくまばらです。上から石がころがり落ちてくるとわかっていれば、その真下を避けて石垣を登ればいいわけで、それでは守備側は何の効果もありません。そもそも、こんな狭いすき間から落すことのできる石なんて、せいぜい握りこぶしぐらいの大きさです。そんな石に当たっても「痛っ!」というぐらいのものでしょう。あるいは、石落しからは煮えたぎった油や糞尿を撒いた、なんて言う人もいます。これは江戸時代に書かれた軍学書にそう書いているそうですが、実はこれは南北朝時代の楠木正成の戦いぶりを、太平記などの軍記物が面白おかしく書いたお話しです。江戸時代後半の泰平の世の軍学者が、慶長期前後に築城されたお城の石落しを見て太平記の記述からその使用法を想像した、というのが実態ではないでしょうか。第一、こんな屋内で油や糞尿を煮えたぎらせようと思ったらその準備はリスクが大きすぎますし、それを石落しから撒く側のダメージも相当に大きいと思います。では石落しの用途は何か、と言いますと、ここから鉄砲で石垣に取りつく敵を狙い撃つ銃眼です。これだけの長さがあれば石落しの真下だけでなく、左右かなり広角に射撃することも可能です。つまり下方向に向けられた狭間というわけです。当時の銃は下を向けたら弾が転がり落ちるのでは? なんて心配される方もいますが大丈夫、弾はちゃんと銃内部で留まるようにできています。

蓋つき狭間また、石落しのすぐ横には蓋付きの狭間も見えます。これは雨水が屋内に入り込まないように平時は蓋が閉められています。

 

 

 

雨水抜き雨水と言えば、窓の下側の桟にあたる部分を注意してご覧ください。小さな丸い穴が開いて内側はパイプが通っているのが見えますね。これはこの桟に溜まる雨水を抜くためのパイプです。現在は周囲が補修されてパイプも樹脂性のものが入っていますが、このしくみ自体は造営当時のものです。建築物を雨による劣化からいかに守るか、というのはお城の維持管理にとって大きな問題だったのですね。

 

窓の格子(城外側)

城外側

窓の格子(城内側)

城内側

また、窓を見ると太い縦格子が入っていますが、この格子は八角形の断面を持っています。城外側の窓にはこのような格子が入っているところが多いですね。これは、この窓からも敵を射撃するためで、八角形にしておくと四角形より鉄砲を左右広角に狙えるからなんですね。また、漆喰で塗り籠められているため外からはわからないのですが、格子の内部はただの木じゃなくて、八角形の断面をもつ木柱を鉄板で四面または八面全部を巻いてから塗り籠めているそうです。窓に取りついた敵が簡単に刃物で格子を切られないようにするためです。そう言えば、右手の城内側の窓には全部、普通の四角い木が入っていますし、漆喰もされていませんね。

れノ渡櫓これまでお話ししてきた石落し、狭間、雨水抜きなどさまざまな仕掛けを、城外側から見ると写真のように見えます。窓の下に雨水抜きのパイプがたくさん角のように飛び出しているのがご覧いただけますか?
では、さらに先に進みましょう。

 

 

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西の丸建物名称

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