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水ノ一門

水ノ一門は、城門としてはあまり使われることのない棟門という形式の門です。棟門とは、両側の鏡柱に冠木を渡して切妻屋根をかけただけの簡単な門で、姫路城内でもこの水ノ一門と次の水ノ二門、そしてちノ門の3つしか残っていません。しかもこの水ノ一門は、ちノ門とともにこれも城門としては異例の片開き扉です。 しかし、水ノ一門に向かって右側にはあの油壁が袖塀として門の屋根の高さよりはるかに高くそそり立っています。左側は天守台の石垣です。そして、この門を入るとすぐに天守台の石垣の角に沿う形で左折することになります。見かけは小さな水ノ一門ですが、ここまで敵に攻め込まれた時にはじゅうぶんに「時間稼ぎ」ができる守りへの備えはできています。

また、水ノ一門をくぐったらぜひ見ていただきたいのは足元の勾配です。お気づきですか? 緩やかな下り坂になっていますね。これまでわれわれは菱の門以降、ずっと上り坂を登ってきました。小高い丘の上にある天守を目指しているのですから当然ですね。ところがここにきて緩やかに下り坂になっているのです。この下りは次の水ノ二門をくぐったあとも三門の前まで幅広の下り階段となってさらに続きます。 わたしは先ほどほノ門をくぐったところで「こちらが天守への近道」と正解をお教えしてしまいましたので皆さんは不安にはならないでしょうが、正解を知らない敵の軍勢だったらどうでしょう? まさにゴールである天守は頭上であり目の前ですが、「あれ? 下り坂? さてはこちらの道は間違いで、ほノ門からまっすぐ進むべきだったのでは?」と混乱し、不安になるでしょうね。そのような敵の一瞬の躊躇を生み出し、侵攻スピードを遅らせることもここでは意図しているのです。 でもわれわれは大丈夫。迷うことなく下り坂を先に進みましょう。
なお、このあと天守入り口に至るまで「水」の名前を持つ門が六門まで6つ続きます。これは、ほノ門を入って左手、北側の多門櫓(現在ろノ渡櫓と命名されている建物)内に井戸があるので、いざ天守で籠城となった時にこの井戸から汲んだ水をこれらの門を通って天守に運びあげることを意図していたからで、水ノ一門から五門までの細長い区域を「水曲輪」と呼ぶこともあります。 水ノ一門をくぐって左折したらすぐ目の前に水ノ二門があります。
※写真提供 K.Yamagishi’s 城めぐり

水ノ二門・三ノ櫓に進む

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