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ちノ櫓・折廻渡櫓

ちノ櫓~折廻渡櫓上山里丸は、往時は備前丸の石垣と2つの出入口の門、そして周囲をぐるりと多門櫓と隅櫓等の建物で囲まれていました。先に見ました現在狭間のない土塀の部分も昔は塀ではなく多門櫓であり、一番突出した部分にはとノ櫓という隅櫓、そしてそこからさらに現存している建物に向かっても多聞櫓が連なっていましたが、すべて失われてしまいました。
現存する建物のうち向かって左端の二重櫓がちノ櫓、そしてそこから右の方に接続する二階建ての渡櫓を現在は左からりノ一渡櫓、りノ二渡櫓と呼んでいます。ちノ櫓は江戸時代後期の記録にも出てきますから正しい名称ですが、りノ渡櫓という呼称は例によって明治時代につけられたもので、イロハの順番を考えてもここにリが来るのは不自然ですから、ここでは往時の記録にならい二棟をひとつの渡櫓とみなして折廻(おれまわり)渡櫓としてご紹介します。

石棺展示ちノ櫓近くにいくつかの石棺が展示されていますね。これは城内の石垣各所で見つかったもので、補修工事で取り換えが必要だった石棺を抜いたあとでここに展示したものです。大小の箱型のものは大人と子供の石棺だと思われます。また平たい石がありますが、これは蓋ではなく棺の底の部分だそうです。この石の四方に壁となる石を4枚立てて、箱を組み立てたようです。古代、この姫山は古墳の地であったようで、秀吉にしても輝政にしても、時間に追われて築城しなければいけない中、掘れば出てくる、しかもすでに四角く成形された石棺や墓石などは、かっこうの石垣石材としてありがたい存在だったはずです。ちなみに、当時の考え方では石棺や墓石、五輪塔などは霊の憑代(よりしろ)ではなくただの石そのものなので、今日考えるような「縁起が悪い」とか「罰が当たる」などという考え方はなかったようです。

鯱瓦展示また、その右手の方には3体の鯱瓦が展示されています。比較してご覧ください。江戸→明治→昭和と時代が下がるにつれて、あきらかに細工は細かく洗練されてきていますが、その分やや荒々しさに欠けるような気がしませんか?
鯱は頭が虎、体が魚の想像上の動物で、口から水をはいて火を消す、というので古来より火除けのお守りとして広く建築の最上部に用いられてきました。ところで、鯱には通常雌雄があるのをご存じでしょうか? 神社の狛犬と同様「阿吽の形(あうんのぎょう)」で一対とされ、口を開いている阿形がオス、閉じている吽形がメスと言われています。雌雄でうろこの大きさなどにも若干の差があります。姫路城には大天守だけで11個の鯱瓦があげられていますが、昭和30年代に行われた昭和の大修理では、これら11個の鯱がすべて新造され取り換えられることとなりました。そこでそれまであげられていた鯱を詳しく調べると、西側大入母屋屋根にかかっている鯱1尾がもっとも古い貞享4年(1687年)製であることがわかりました。それで、できるだけ古い形を後世に残すという原則のもとに、この1尾をモデルに鯱を再現し、すべてこの形で取り換えました。そして、平成の修理では最上階の一対のみを再度取り換えましたが、デザインは昭和の修理のものを踏襲しています。ですから、姫路城の大天守の鯱は雌雄一対にはなっておらずすべて一種類のみです。では、それはオスでしょうかメスでしょうか? どうやら口を閉じているようにも見えるのでメスではないか、と言われていますが、比較の対象となる他の種類が存在しないので、実ははっきりしません。各方面から「1種類はおかしい。雌雄両方を復元するべき。」との声もありますが、姫路城を管理する姫路市教育委員会では、モデルとなる確固たる史料がない中で想像でもう1種類を作ることはできない、もし将来、実物や絵図で一対の造形が明確になれば雌雄として復元する可能性はある、と言っています。これはこれでひとつの見識だと思います。

石段の刻印ここではもうひとつ、見どころをご紹介しましょう。渡櫓の一番右手、次のぬノ門と接続する部分にほんの数段の上り階段がありますね。その石段の上から三段目と四段目にご注目ください。それぞれひとつずつ刻印が見えますね。何かの符牒のようです。
刻印については一番最初の桜門の脇で斧(よき)の刻印をご覧いただきましたが、姫路城では現在約50種類90個ほどの刻印が城内で見つかっています。一般的に石垣刻印は名古屋城、江戸城、徳川大坂城など、徳川幕府が各地の大名に命じて作らせた「天下普請」の城で、各大名の石の所有権や担当場所を主張する印として使われましたが、ここ姫路城はもちろん天下普請の城ではなく池田輝政という単独の築城者による城ですから、大名を表すものではありません。ただ多くの刻印で意味合いとしては同じで、石の確保や石積みを担当する石工や家臣を表す記号だったようです。よく見ると城内のエリアごとに同じ刻印が集中して見られる傾向にあります。

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