2015年5月28日朝日新聞記事
姫路城の大修理、書き下ろし曲で祝う 31日に初披露
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世界文化遺産・姫路城(姫路市)の「平成の大修理」が完了したことを祝って東京都在住の作曲家が作った楽曲「白鷺(しらさぎ)幻影」を、吹奏楽団「姫路ウインドアンサンブル」(姫路市)が、31日に姫路市文化センター(同市西延末)である定期演奏会で初めて披露する。地元が誇る姫路城がテーマとあって楽団員らの練習にも力が入る。
「もう少し音を強くしましょうか」「そこ、少し早すぎる」。姫路市大津区の練習場で23日、演奏会を間近に控え、仕上げの練習があった。約40人の団員を前に指揮者の小林大輔さん(30)の指示が飛ぶ。クラリネット、コントラバス、サックス、トロンボーンなど約15種類の楽器で奏でる白鷺幻影は、日本的な旋律が特徴だ。
「白鷺幻影」は、東京在住の作曲家の桑原洋明さん(73)が2014年秋に作曲した。桑原さんは11年5月に工事用建屋に包まれた姫路城の姿を見て、大修理後の白く輝く白鷺城を想像し、作曲を決意した。
「物語を作って、そこに曲をのせよう」。桑原さんは姫路城について調べるなかで、姫路市のホームページで剣豪・宮本武蔵が姫路城に現れる妖怪を退治する伝説を見つけた。曲の始まりを低音にして重厚な姫路城を表現した。例えば、トランペットの音は宮本武蔵を、オーボエとグロッケン(鉄琴)の音は大天守最上階の刑部(おさかべ)神社にまつられている刑部姫をイメージしたという。
桑原さんは「姫路城は姫路にとっても、日本にとってもかけがえのない城。交響詩のようにして、姫路城の雄大さを曲に込めた」と語る。
桑原さんは13年、知人がいた姫路ウインドアンサンブルに「姫路城の大修理が完成する年に間に合うように作曲するので演奏してくれないか」と持ちかけた。話を聞いた団長の三木久治さん(58)は「黒田官兵衛の大河ドラマ、姫路城大天守のオープンと続くなかで、作曲の申し出はちょうど良いタイミングだった」と応じ、演奏を決めた。
だが、いろいろな登場人物をモチーフにしたメロディーがあり、一つにまとめるのが難しい曲だった。「音の合わせ方がわからず、初めは曲の体をなしていなかった」と三木さん。楽曲の音源を楽団のホームページに載せて団員が共有し、個人練習がしやすいようにするなど工夫し、練習を重ねてきた。三木さんは「納得のいく演奏ができるようになった。多くのひとに聴いてもらいたい」と話す。クラリネットを担当する姫路市の会社員広瀬久美子さん(37)は「職場が姫路城の近くで、毎日姫路城を見ている。想像以上に美しくなった城を、もっと多くの人に表現して伝えたい」と話している。
31日午後1時半に開演。
3部構成で、「白鷺幻影」は第1部の最後に披露。他にドボルザークの交響曲第9番「新世界より」やアニメ「進撃の巨人」などの曲が楽しめる。入場無料。問い合わせは姫路ウインドアンサンブル(090・8796・5305)へ。(遠藤和希)
〈姫路ウインドアンサンブル〉 1986年に姫路市で結成された吹奏楽団。現在は社会人や大学生ら10~50代の団員55人が在籍。普段は毎週水曜と土曜の夜に2時間練習し、年1回の定期演奏会やクリスマスコンサートを開いている。